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新入社員研修の企画

  • 金子典生
  • 2021年1月10日
  • 読了時間: 5分

更新日:2021年8月11日

1月の第1週も終わり、そろそろ4月からの新入社員研修の準備を始めている企業も多いのではないだろうか。


ただどうも見ていると、新入社員研修は、毎年同じ内容、同じ時間配分で実施している企業が多いように私は感じている。


もちろん、しっかりと学習目標を設定し、それを達成するためのプロセス(ストーリー)と学習目標の達成を確認する方法や基準を確立しているのであれば、毎年同じプログラムでも構わないと思う。


とは言うものの、新入社員は毎年少しづつでも違っているはずなので、その能力や考え方、成熟度などに合わせ、研修プログラムの内容や時間配分などの微調整は必要になるだろう。


一般的に新入社員研修は、毎年同じプログラムを実施していれば大丈夫なように思われがちであるが、私は新入社員研修は研修の中でも難しい部類だと考えている。


私自身、企業内の人材開発部門にて10年間、新入社員研修に携わってきた。

別の担当者が企画した新入社員研修に一緒に取組んだこともある、また自分自身も主担当として研修内容を企画し、実行した経験もある。


そこから言えることは「新入社員研修は楽にやろうと思うと、とても楽に出来る研修だが、将来を担う新入社員を、企業のためにも、本人のためにも一定レベルまで引き上げるという目的に本気になって取り組むと、とてつもなく労力がかかり、難易度も高い研修にあたる」ということである。


多くの企業では、新入社員研修は少なくても1ヶ月、長い場合にはトヨタのように1年間、新入社員研修を行う企業もあり、様々である。


新入社員研修の長さについては、企業の考え方や現場のOJT力、人材育成部門の企画実行力によって変わるため、その長短について述べるつもりは一切ない、ただ一般的に比較的長い期間であることから、「誤魔化しが効きやすい」というのが現実なのである。


「誤魔化す」という過激な表現を使っているが、要は学習目標や達成プロセス、評価方法や基準が曖昧でも比較的期間が長いため、様々なプログラムを並べるだけ、詰め込むだけで、「何とかなってしまう」ということ。


例年通りで良い、面倒なことはしたくない、何とか誤魔化してやれば良いと考えておられるのであれば、ここから先は読んで頂く必要はない。


ただ新入社員研修が上手くいかない、もやもやが消えない、社内で新入社員が育ちにくい、現場からもっと教育をしてから配属してくれといった声などがあるのなら、以下の点を留意して企画実行をして頂ければと思う。


まずは、新入社員をどのレベルまで持っていくのか、その目標やゴールを決めることから、スタートすべきと考える。この時点では、全体的なイメージで構わない。


そのうえで、入社予定の新入社員の現状分析をしてみる。

知識、能力、考え方の区分で、そのレベルや特徴を分析、把握する。

能力については、特にコミュニケーションスタイルやレベルは要注意である。


これらを経て、最初に行った目標やゴールイメージを知識、能力、考え方の区分ごとに分解して、具体化する。


要は知識、能力、考え方、それぞれの区分において、新入社員研修が終わった時点で、どのようになっているべきかという「学習目標」を設定するということである。


そして、それぞれの学習目標が達成できたかどうかの評価方法や基準を決めることになる。


評価の方法としては理解度テストでも良いし、行動をチェックするようなもので構わない。


ここでの肝は、評価基準である。

テストでの点数であれば簡単だが、行動レベルを評価をするには基準をしっかりと設定しなければ、評価者によってバラつきが発生するリスクがあるということ。


そして、最後に知識、能力、考え方それぞれの学習目標を達成するためには、今の新入社員の現状から何をどう教育するのかという研修内容やプログラムを検討していくことになる。


つまり、ビジネスマナー研修に何時間、商品知識の研修に何時間という具体的なプログラム内容と時間が決まるということだ。


詳細プログラムの決定にあたっては、研修内容の見直しや講師への細かい要請、それぞれのプログラムの関連性や繋がり、流れやストーリーも考慮して、内容、時間配分、日程などを決めていくことになる。


そして、これで終わりではなく実際に新入社員研修がスタートすると、企画者が自ら決めた目標を達成させるため日々の研修内容の確認し、新入社員の様子や反応を見ながら、場合によっては追加プログラムを導入したり、内容の変更、研修順序の入れ替え等を行いながら、目標に向けて調整していくのである。


研修を講師に任せすだけでなく、企画担当者による日々の指導やフォローも不可欠なのが、新入社員研修の特徴である。


それをしないと、目標やゴールまで辿り着けないのである。


もちろん、このようにプログラムを設定し、実行しても上手く行かないことがある、むしろその方が多いかもしれない。


まして、真っ白ではあるものの、それぞれ育った環境も異なる新入社員を一定のレベルまで持っていくのは簡単なことでない。


新入社員研修の企画実行は、トライ&エラーの繰り返しである。

その振れ幅が、他の研修プログラムに比べて大きいというのが、長年、新入社員研修や人材開発に携わってきた私の印象である。


これが、新入社員研修が難しいという理由である。


ただ、このプロセスを踏まないことには、翌年の改善にも繋がらないし、研修プログラムを立案するスキルの向上にも繋がらず、毎年同じことを繰り返し、いつまで経っても新入社員が一向に育たないという悪循環に陥ってしまうのである。


また費用と労力をかけてやっと採用した新入社員を、しっかりと育成しないともったいないはずである。


研修企画の仕事という面に目を向けると、研修プログラムを並べ、日程表を作成するのは、私は「計画」でしかないと考えている。


そうではなく、学習目標を設定し、現状把握と分析を行ったうえで、具体的な方策を考え、ストーリーや企てを持って取組み、目標の達成状況を検証し、そして将来に向け改善を行うというのが、大変ではあるが「研修企画」の仕事だと考える。


新入社員研修の担当者は、計画者ではなく企画者になることで、会社と将来のある新入社員の両方に貢献できる存在になるのではないだろうか。


単に研修プログラムを提供するのではなく、上記のような「企画」のお手伝いをすることも

私の使命であると考えている。





















 
 
 

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