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金子典生

エンゲージメントの考え方と取組み手順

更新日:2021年8月11日

以前エンゲージメントに関して、その内容には触れず、流行りの取組みに流されないようにといった視点でブログを記載させて頂いた。


とはいうものの、皆さんの関心も高く、実は私自身も企業在籍時にエンゲージメント向上の実務経験があるため、少しお話をさせて頂きたいと思う。


エンゲージメントの定義については、様々な団体やコンサル会社が定めているが、簡単に言うと「従業員と企業の関係性」についての問題であると私は考える。


エンゲージメントが対象とする「関係性」については、私は4つの分野があると考える。


1つ目は、自分が所属する職場や部署内の関係性。

2つ目は、自分の所属していない他部署との関係性。

3つ目は、経営(経営幹部や経営トップ)との関係性。

4つ目は、企業体そのものとの関係性。


1つ目の「自分が所属している職場や部署内の関係性」だが、これは職場の同僚との関係性と上長との関係性との2つに分けることができると考える。


転職者に対するアンケートで「退職理由の本音」について調査したところ、第1位が職場の人間関係であるという結果が出ている。


いかに1つ目の関係性が重要であるかが、ご理解頂けると思う。


そして、1つ目の関係性は、職場のマネジメントの問題でもあるということである。


そうすると、これらを改善するためには、マネジャーへの教育や指導、メンバーへのチーム力向上などの取組みが中心になってくる。


2つ目の関係性は、「他部署との関係性」だが、具体的には部署間の連携や協力、情報共有などが行えているかという「企業風土」の問題に関する内容が中心になってくる。

また、そもそも部署間の交流が有るのかといった問題も対象になる。


そうすると、2つ目の関係性を改善、向上させる対策として、まず部門横断のプロジェクトが最初に思い浮かぶ。

更に部署間の交流ができるようなイベントなどの取組みも有効になってくるだろう。


3つ目の関係性は、経営や経営トップとの関係であるが、これは具体的には経営方針や経営ビジョン、経営理念(企業理念)といった企業や経営の基軸となる内容に関するものから、経営幹部や経営トップに対する信頼感、距離感といった感情面にまで至ると考える。


この対策については、経営方針やビジョン、理念に対する理解や共感を従業員に持ってもらうための教育やディスカッション、実践活動、上司からの指導が対策としてあげられる。


また、経営幹部や経営トップの言動の見直しや一般社員とのコミュニケーション機会の増加などの対策が必要になってくる。


そして、4つ目の企業体そのものとの関係性については、具体的には賃金や福利厚生、昇進昇格などの人事制度の納得感といった問題である。


賃金や福利厚生等は良いには越したことはないし、ある意味キリがない問題ではあるため、世間並というか一定レベルというのが、関係性の土台になってくると考える。


もう1つは、人事制度の運用や評価の公正性や納得感といった問題がある。


マズローの欲求5段階説を考えてみて欲しい。


一番、土台にあるのが「生理的欲求」「安全の欲求」という生存欲求であり、物質的欲求でもあるのだ。


つまりこれらが、ある程度は満たされないと上位の欲求に移行するのは難しい。


したがって、まずは賃金や福利厚生といった処遇面の改善、対策が「4つ目の関係性」には重要であると考えられる。


私はエンゲージメント向上の取組みには、エンゲージメントサーベイの結果等を見ながら、どの関係性が弱い、低いのがを分析したうえで、マズローの欲求5段階設に従いながら順序やアプローチを考えていくのが、非常に大切であると考える。


そうすると、4つ目の関係性、賃金や福利厚生などの処遇改善を、まずは最初に行うべきであるという順序になる。


それが一定レベルにある場合は、マズローの3番目にある「社会的欲求」を満たすために、1つ目の関係改善である職場のマネジメントやチーム力向上といった取組みに着手すべきであろう。


また同じく「社会的欲求」を満たすために、2つ目の関係性である他部署との関係性を改善向上させるため、部門横断の取組みや社員同士の交流イベントなどに着手することになる。


次に取り組むのは、マズローの4番目にある「承認欲求」になるが、これに該当するのは、職場のマネジメント、チーム力向上、部門横断、社員同士の交流など既に述べた内容の中にある程度組み込まれている。


更に追加をすると、人事制度、評価制度などの改善や上司とのコミュニケーションの改善などによって、「承認欲求」に満たすことができると考える。


そして最後に行うのがマズローの5番目の「自己実現欲求」であり、経営方針やビジョン、企業理念などを理解、共感しながら、社員個人のありたい姿とそれらを重ね合わせるような取組みを行うことになる。


これについては、研修や経営幹部とのコミュニケーションといった方策が中心にはなるが、それと共に、従業員自身も自らのキャリアやありたい姿を考えるということが非常に重要になってくる。


そして、教える、理解する、考えるだけでなく、「実践する」ことが何よりも大切であると私は考える。


強い企業というのは、「会社のビジョンや方向性、理念を理解、共感しながら、従業員自らがそれらにしたがって、自己実現を果たそうと自律的に行動している企業である」と考えるからである。


時々あるのが、賃金などの処遇改善をしたくないため、いきなり「自己実現欲求」に社員に目を向けさせて、明るい未来像ばかりで従業員を引き留めようとする企業である。

そのような企業は定着率も低く、若い社員ばかりが多いといった特徴があるように思う。


エンゲージメント向上は、従業員の定着、モチベーションの向上や企業としての生産性向上に非常に有効な取組みである。


エンゲージメントの取組みを行う際には、是非とも、マズローの欲求5段階説という「人間理解の前提」に立って実施して頂きたいと思う。


広い意味で生産活動(経営を含む)に携わっていると、どうしても効率にばかり目が行ってしまい、ヒトは機械やモノでなく、感情を持っていることを忘れてしまいがちである。


私自身への自戒を含め、「ヒトを動かすのは理屈ではなく、感情であること」を常に考えて人事施策に取り組みたいものである。












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